忘れ物の歌
いつの日だったか
あなたのお供についてきた日
わたしは、あなたのお仕事中
じゃまにならないようにと
置かれた場所で
じっと帰りを待っていました
けれどもあなたは、どうしたわけか
待っていたわたしに目もくれずに
さっさと行ってしまいました
わたしは声も出せずに
あなたの遠ざかるのを
黙って見ているだけでした
忘れ物おき場の棚で
たくさんの忘れ物たちと
お互いの身の上を打ち明けあって嘆いては
もしかして棄てられたのか
もうわたしたちは用済みなのかと
わたしを愛してくれたあなたのことを思い
時々悲しくなることがあっても
あなたがくれた目と手の温もりを
わたしは決して忘れてはいません
忘れ物展示の日になって
わたし達は棚から移され
明るい待合室のテーブルの上で
迷子札を胸に下げて
こうしてあなたが探してくれるのを
どんなに待ちわびたでしょう
隣に並んでいた傘君が
昨日持ち主に再会して
嬉しそうに引き取られて行く様子を
妬ましく、羨ましく眺めながら
必ずわたしを見つけてくれることを信じて
わたしは今日もあなたを待っています