自作詩歌 木洩れ日の記憶
おまじない
              

「いたいのいたいの飛んでけ」
という祖母や母のおまじないは本当によく効いた
どんな薬をつけるよりも先に
いつも一瞬に痛みも涙も吹き飛ばしてくれた
いつの日か親になり祖父母の歳になって
おさな子に同じことばをかけている自分を
不思議と懐かしくうれしく思ったりした
重い病にのたうちまわっているこの世界に
あの魔法のようなおまじないがいきていれば
人々はどんなにか救われるだろう
この世界のひどい病には
どんな薬もおまじないも効きそうにないが
人々はいまもお守り札や絵馬を買って
ささやかにいっときの幸せや安寧を心に願う
けれど
ことあるごとに年老いた祖父母がいつも唱えていた
「なもあみだぶつ」のお念仏は
なぜかあらゆる物事に対する万能の妙薬のようだった
祖父母に近い年齢になっていま
ふしぎとそれがわかるような気がする
出口の見えない社会にあって人々の救いは
心底それを願う祈りの中にあるのかもしれない
つらい苦しみ悲しみに耐え涙をこらえている人の姿をみるとき
「いたいのいたいの飛んでけ」
といまでも心の中で思うときがある