逝きし母  


逝きし母見送る朝は五月雨 涙の後に安らぎぞあれ


一瞬に涙あふれて慟哭す 棺にいます母を見遣りて


お別れに添えたる花に積む思い 冷たき母の頬をさすりて


観音と旅行く母を思いけり 棺に入れし御仏の像


いつの日か必ずくると知りながら 今日の思いはいかんともせじ


繰り返し瞼に浮かぶ母の顔 過ぎたる日々は還らざりしを


今日からは母は居らぬと思いせど 尽きぬ想いをいかにかはせん


哭くまいと思う心はいや悲し 遺影を前に泪かすみて


佳き日々を母と過ごせし義姉たちの 想いの丈や如何ばかりなん


弔いに母の越しかた語る兄 母の短歌の生きて輝く


美しく老いて逝きたる母なれば 子らに遺せし豊かなる日々


過ぎし日の微笑む母を目のあたり 思い返せば心安らぐ


 (平成十八年五月二十一日 母逝去の日に詠む)