自作詩歌 木洩れ日の記憶
 豊かさと貧しさと   


暮らしの貧しさは少しは耐えることができても
心の貧しさには耐えられない思いがある。
貧乏でも 人々が肩寄せあって温めあった
あのぬくもりはどこへ行ってしまったのか


確かに かって貧乏が
どんなに人の心を打ちのめし、
心を鬼にするほどのつらい仕打ちや
悲しい決断を強いられた過去を思うとき
今の暮らしと便利さはどんなにか
私たちが待ち望んだことであった
けれど かって
互いの絆なくして
生きていくことができなかった時代の
苦しみや悲しみや喜びは、
私たちの共有財産でもあった。
生活がどんなに豊かでも
それと引きかえに失ったものの大きさは
どれほどのものであろう
そして今
幸も不幸もすべて自己責任として私有財産となった。
速くて便利な世界のなかで
時間と距離がどんなに縮まっても
心の距離は まるで遠くへ隔たっていくように
人はみな見知らぬ貌をして通り過ぎ
膨張する宇宙の星雲のように
互いに遠く飛び放れていくのであろうか。

豊かさとはなんであろうか
貧しさとはなんであろうか
人の世はどこへ向かっているのであろうか
私たちが望んでいるものはなんであろうか