地平線
あの地平線のむこうに
つらかったこと悲しかったことは
みんな埋めてきた
若気に重ねた数々の愚行も
先年亡くした母の記憶も
埋まっている
けれど
なにか大切なものを
置き忘れてきたような気がして
しかたがない
なにを忘れたのか気になって
じっと考えてみるが思い出せない
追いかけても追いかけても
逃げていく地平線
どんな高みに上っても
いつも目の高さに
真一文字に広がる
地平線
ときどき蜃気楼のように
思い出しだしたくない記憶が
立ち昇っては消える
けれどやはり
無くしたくないなにか大切なものが
あの地平線のどこかに埋まっている気がして
手繰り寄せることもできず
ほのかに物悲しく
真っ赤な太陽が
日々の記憶とともに今日も沈んでいく
地平線